口臭に悩んでいませんか?
歯科医院の診療データでは、実に8割以上の方が口臭を自覚しているという結果が出ています。
今回は、口臭の専門家として、その原因と対策を詳しくお伝えいたします。
実は口臭には5つの異なるタイプが存在し、それぞれの症状に応じた適切な対処が求められるのです。
この記事では、口臭の各種類と原因を細かく解説。自分の症状がどのカテゴリーに当てはまるのか、また専門医への相談が必要なレベルなのかを見極めるためのポイントをご説明していきます。
さらに、専門医監修による具体的な改善方法もご紹介していますので、どうぞ最後までご覧ください。
口臭の種類
口臭には大きく分けて5つの種類があります。それぞれの特徴と原因を理解することで、より効果的な対策を取ることができます。
飲食物・嗜好品による口臭
ニンニクやニラなどの香りの強い食材、コーヒーや酒類、タバコなどの嗜好品によって発生する一時的な口臭です。これらの食品に含まれる成分は、消化の過程で血液中に取り込まれ、肺から呼気として排出されるため、歯磨きだけでは完全に消えません。
特にニンニクに含まれるアリシンという成分は、体内で代謝されて強い臭いを発する物質に変化します。ただし、この種類の口臭は時間の経過とともに自然と改善されるため、医療機関での治療は必要ありません。
生理的口臭
誰にでも起こりうる自然な口臭で、特に起床直後や空腹時、緊張時に強くなります。主な原因は唾液分泌の低下です。唾液には口腔内を清潔に保つ働きがありますが、睡眠中や空腹時は分泌量が減少。その結果、口腔内の細菌が増殖し、揮発性硫黄化合物(VSC)という口臭の原因物質を産生します。
また、女性のホルモンバランスの変化や年齢による体質の変化も影響を与えることがあります。
心理的口臭
実際には目立った口臭がないにもかかわらず、自分には強い口臭があると思い込んでしまう状態です。対人関係での不安やストレス、過去のトラウマなどが背景にあることが多く、本人は人と話すことを避けたり、マスクを常時着用したりするなどの行動変化が見られます。
周囲の人は特に気にならない程度でも、本人は深刻に悩んでいるのが特徴です。
ストレスによる口臭
精神的なストレスは自律神経系に影響を与え、唾液の分泌を抑制します。唾液が減少すると口腔内の自浄作用が低下し、細菌が増殖しやすい環境となります。また、ストレス下では胃酸の分泌も増加し、それが口臭の原因となることもあります。
長時間のデスクワークやプレゼンテーションなど、緊張を伴う状況で特に強く感じられます。
口臭の原因
口臭の原因は、その大半が口腔内のトラブルに起因します。原因を特定し、適切な対策を取ることで改善が期待できます。
虫歯
虫歯は、進行度合いによって口臭の強さが大きく異なります。初期段階の小さな虫歯ではあまり気になりませんが、進行して歯の神経まで達すると強い口臭の原因となります。これは、虫歯の穴に食べ物が溜まり腐敗したり、神経が壊死したりすることで発生します。
特に奥歯の虫歯は気付きにくく、知らないうちに深刻な口臭を引き起こしている可能性があります。
歯垢
歯垢は、歯の表面に付着する柔らかい細菌の集まりです。食べ物の残渣を栄養として繁殖した細菌が、タンパク質を分解する過程で硫化水素やメチルメルカプタンなどの悪臭物質を産生します。特に就寝中は唾液の分泌が減少するため、歯垢中の細菌が活発に増殖。朝一番の口臭の主な原因となっています。
歯石
歯垢が長期間放置されると、唾液中のカルシウムやリンなどのミネラル成分が沈着して硬化し、歯石となります。歯石自体には臭いはありませんが、表面が粗いため新たな歯垢が付着しやすく、細菌の温床となります。また、歯石は歯ブラシでは除去できないため、プロフェッショナルケアが必要です。
歯周病
歯周病は口臭の主要な原因の一つです。歯周病菌が歯周ポケット内で増殖し、炎症を引き起こすと、歯肉からの出血や膿が発生します。この過程で細菌がタンパク質を分解し、揮発性硫黄化合物を生成します。初期段階では痛みがないため気付きにくく、徐々に口臭が悪化していきます。
舌苔
舌苔は、舌の表面に付着する白っぽい膜状の汚れで、剥離した粘膜細胞や食べかす、細菌などで構成されています。特に体調不良時や口腔内が乾燥している時に厚く付着しやすく、強い口臭の原因となります。
舌の奥の方に付着した舌苔は、通常の歯磨きでは除去しきれないことが多いです。
唾液
唾液には口腔内を洗浄し、細菌の増殖を抑制する働きがあります。ストレスや加齢、薬の副作用などで唾液の分泌が減少すると、口腔内の自浄作用が低下し、細菌が増殖しやすい環境となります。また、口腔内が乾燥することで、粘膜からの剥離細胞が増加し、これも口臭の原因となります。
プラスチック製の義歯
プラスチック製の義歯は多孔質な構造を持つため、食べ物の色素や臭い成分を吸着しやすい特徴があります。また、長期使用による表面の劣化や傷により、細菌が付着しやすくなります。特に就寝時も装着したままにしていると、唾液の流れが悪くなり、義歯の周囲で細菌が増殖しやすくなります。
不良な冠、かぶせた金属の腐食
歯の被せ物や詰め物が劣化すると、端っこに隙間ができたり、表面が粗くなったりします。この隙間に食べ物が詰まり、細菌が繁殖することで口臭の原因となります。また、金属の腐食により金属イオンが溶出し、独特の金属臭を放つことがあります。痛みを伴わないため気付きにくい問題です。
鼻やのどの病気
副鼻腔炎(蓄膿症)や扁桃炎などの鼻腔・咽頭の炎症性疾患は、膿性の分泌物が口腔内に流れ込むことで口臭を引き起こします。また、慢性的な鼻づまりは口呼吸を誘発し、口腔内の乾燥を招くため、間接的に口臭の原因となることもあります。
消化器系、呼吸器系の病気
胃食道逆流症(GERD)では、胃酸が食道に逆流することで特徴的な酸っぱい口臭が発生します。また、慢性気管支炎や肺炎などの呼吸器疾患では、感染や炎症により生じた分泌物が口臭の原因となることがあります。これらの症状がある場合は、専門医への相談が推奨されます。
口臭対策
口臭を改善するには、日常的なケアと専門的なケアの両方が重要です。以下の対策を継続的に行うことで、効果的な口臭予防が期待できます。
歯科医院で定期的にケアを受ける
定期的な歯科検診は口腔内のトラブルを早期発見・予防する重要な機会です。プロによるクリーニングでは、自宅では除去できない歯石を取り除き、歯と歯肉の状態を詳しくチェックします。また、ガスクロマトグラフィーなどの検査機器を使用して、口臭の種類や強さを客観的に測定することも可能です。
これにより、自分では気付きにくい口腔内の問題を把握し、適切な対策を立てることができます。
就寝前に水を飲む
睡眠中は唾液の分泌が減少し、口腔内が乾燥しやすい状態になります。就寝前の水分補給は、口腔内の保湿を助け、細菌の増殖を抑制する効果があります。特に冷たい水よりも常温の水を少量ずつ飲むことで、より長時間の保湿効果が期待できます。
ただし、就寝直前の大量の水分摂取は夜間の頻尿につながる可能性があるため注意が必要です。
寝る前のオーラルケアを念入りに行う
夜間は唾液による自浄作用が低下するため、就寝前の徹底的な口腔ケアが重要です。歯ブラシによる基本的なブラッシングに加え、歯間ブラシやデンタルフロスを使用して、歯と歯の間の食べかすや歯垢を丁寧に除去しましょう。
特に歯周ポケットの周辺は念入りにケア。また、マウスウォッシュで仕上げることで、より清潔な状態を保つことができます。
舌を磨いて舌の汚れを除去する
舌苔は口臭の主要な原因の一つで、特に舌の奥に付着しやすい特徴があります。専用の舌クリーナーや柔らかい歯ブラシを使用し、舌の奥から手前に向かって優しく掃くように清掃します。
ただし、舌苔には粘膜を保護する働きもあるため、全て除去する必要はありません。また、強すぎる力で磨くと舌を傷つける可能性があるので、1日1回程度の優しいケアを心がけましょう。
まとめ

口臭の種類によって、それぞれに適した対処法を選ぶ必要があります。
食事や嗜好品に起因する一時的なものから、唾液分泌の低下による生理的なもの、さらにはストレスや心理的要因によるものまで、実にさまざまな口臭が存在しています。
口臭の主な原因は、虫歯や歯垢、歯石、歯周病といった口腔内のトラブル。中でも舌苔の付着と唾液分泌の減少は、特に重要な要因となっています。
義歯や歯の被せ物の劣化はもちろん、鼻やのどの疾患、消化器系の問題も口臭の要因になり得ます。
効果的な予防には、専門医による定期検診と日常的なケアの両方が欠かせません。
歯科での専門的クリーニング、就寝前の適度な水分補給、丁寧な歯磨き、舌のケアなど、包括的なアプローチを心がけましょう。